「ワクワクドキドキ」がガイドを育てる

加藤学さん(2012年ロシア語 2014年英語)

概要

 35人のロシア人の京都観光で、ロシア語と英語でガイドしました。シートベルトを締めてもらうため、「シートベルトはロシア語で何と言うのか?」と悩み、ひとまず英語で伝えました。すると意味を解した一人のロシア人が「こう言うよ!」と叫んだとたん、あっというまに車内はロシア語の「シートベルト」の大合唱。場は和み、私の緊張は解けていました。二日間ツアーのあと、お客様から多大の感謝の言葉をいただきました。お客様に教わりながら、ガイドは成長することを実感しました。

全文

「シートベルトを締めて!」

 昨年秋、三十五人の、「ほぼ」ロシア人団体の、京都ガイドを依頼された。主催は、「はやぶさ」で有名な、日本のJAXAだという。ということは、みな宇宙関係の学者たちだ。しかも、そのうち五人くらいはロシア語が分からないので、時々英語も交えてほしいと。私は、電話を受けるなり、うーんとうなったが、「わかりました。」と、引き受けてしまった。バスに乗り込む。三十五人の目が一斉に私に降り注ぐ。ロシア語で「みなさん、京都にようこそ。」と呼びかけたところまではよかったが、バスの運転手さんに、「ガイドさん、みなさんにシートベルト締めてもらって。」といわれた。私はうーんとまたうなった。ロシア語でシートベルトは・・・。ままよとばかり、「ファーステンシートベルト!」と英語でいうと、ロシア語では、それは「プリスチェグニャーイチェ、レームニ」というんだ、と大合唱が起きた。それで、私の緊張の糸がほぐれた・・・。後は、小さな失敗はあったが、何とか二日間を乗り切ることができ、お客様からも感謝の言葉をいただいた。新米ガイドは気苦労が多いが、こんな「ワクワクドキドキ」は、他ではなかなか味わえない。